People 04.

2025.01.14

海と魚に魅せられて
やってきた、
10代女性漁師の挑戦

野澤琴さん

漁師(宮島丸)

海に面する美浜町では、漁業が主要産業のひとつだ。荒波に挑む漁師の世界は「男の世界」と言われているが、県外から10代の女性漁師がやってきたとの噂を耳にし、さっそく会いに行くことにした。

野澤琴さんは愛知県出身。美浜町日向地区の定置網漁船「宮島丸」で漁師として働き始めてから1年ほどになる。

午前7時前。すでに漁を終えて船が港に戻ってきた

ブリやサワラ、ヒラマサなど季節に応じて多様な魚が採れる。
時々クジラがかかることも

魚を引き上げるところから片付けまで、手際よく作業を進める野澤さん

夜中3時頃に出航し漁を終えた宮島丸が港に戻ってくると、船に乗っていた 7、8名ほどのメンバーで魚を引き上げていく。先輩漁師にまじって作業を進める野澤さんは、漁師を始めて1年とは思えないほどすっかり板についており、堂々とした立ち振る舞いを見せる。

作業が1時間ほどで終わると、朝食を兼ねた休憩時間。ほっとひと息つき、作業中のクールな姿からあどけない10代の姿に戻った。

野澤さんが魚に魅せられたのは、幼稚園の時に作った深海に住む魚の制作がきっかけだ。

「図鑑の中から好きなのを選んで作るんですが、私はアカマンボウが気に入って。その制作をきっかけに魚全体が好きになって、家族と水族館に行くようになりました」
野澤さんの魚好きは、水族館通いから実際に魚を触る・捌くことへの興味に広がり、小学生の時には自分で魚をさばいて料理をするように。さらに、釣り堀で釣った魚を味わえる居酒屋や、名古屋の中央市場で魚問屋のアルバイトも始めた。

「魚といっても、養殖と天然で捌きやすさが違うんです。養殖はスルッと包丁が入るけど、天然の魚は身が締まっていてゴツゴツしているので難しい。そんなことも市場で学んでいるうちに、もっと魚に近づける仕事がしたい。海がきれいな場所で働きたいと思うようになりました」
そこで、市場で知り合った漁師さんを通じて福井県漁連に問い合わせ、宮島丸を紹介してもらうことに。2023年10月に初めて美浜町を訪れ、宮島丸に乗った野澤さんは実際に海にいる魚の多様さに感激し、就職を即決。翌月には美浜町に引っ越し、漁師としての歩みがスタートした。

荒ぶる海に身一つで繰り出す漁師は、男の世界。しかし、実際に飛び込んでみると先輩漁師は思った以上に優しかったという。

「紐の縛り方や作業の手順など、社長や先輩が丁寧に教えてくれるのがありがたかったですね。漁師も高齢化しているかなと思っていましたが、美浜町の漁師は若い人も多くてみんな気さく。女性漁師はまだまだほとんどいないのでもっと増えてほしいなと思います」

厳しさも優しさもある漁師の先輩たち

夜中の3時半頃に出航し、午前中に作業を終えると、午後は県内各地をドライブしながら大好きなパン屋巡りをするなど、漁までの時間はアクティブに活動する野澤さん。休日には太平洋側まで太刀魚釣りに出かけるなど、美浜町を拠点にさまざまな楽しみ方をエンジョイしている。

「漁師としてまだまだ勉強することはたくさんありますが、大きな船も運転したいし、実際に海に潜って漁をする海女さんにも挑戦してみたいし、まだまだやりたいことはたくさんあります。これからも社長や先輩などみなさんに見守ってもらいながら、美浜町の暮らしを楽しんでいきたいと思います」と弾ける笑顔を見せてくれた。

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